特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは公的な老人ホームで、一般的に「特養(とくよう)」と呼ばれています。

老人ホーム種類別施設数の多い順に見ていくと、有料老人ホーム(約13,500施設)、グループホーム(12,100施設)、特別養護老人ホーム(約7,900施設)と施設数では3番目ですが、定員数の多い順に見ていくと、特別養護老人ホーム(約54万人)、有料老人ホーム(約50万万人)、介護老人保健施設(約38万人)で施設の定員数で見ると、施設数では3番目に多かった特別養護老人ホームが「介護付き」「住宅型」「健康型」という3タイプの施設を合計した有料老人ホームよりも多く、最も多くなっています。

このように、特別養護老人ホームは老人ホームとして入居者の最も大きな受け皿となっています。

では、具体的に見ていきましょう。

 

特別養護老人ホームの特徴

老人ホームの中では比較的安価

公的な施設ということもあり、入居一時金は不要ですし、月額料金の相場も6~15万円とリーズナブルです。

月額料金の詳細については後ほど説明します。

原則65歳以上で要介護3以上の高齢者しか入所できない

入居条件の詳細については後ほど説明します。

入居までに待機期間が長い

老人ホームの中では比較的安価ということもあり、申し込んでから入居までの待機期間がとても長いんです。

地域によっても差はあると思いますが、私の住んでいる地域(政令指定都市)では1~2年待ちといった話も聞きます。

地域によってはそれほど待たずに入居できるところもあるようですが、他の老人ホームに比べて待機期間が長いことは間違いないでしょう。

 

入居条件

65歳以上で要介護3以上の高齢者

40歳~64歳で特定疾病が認められた要介護3以上の方

特例により入居が認められた要介護1~2の方

65歳未満の方や、要介護1~2の方も特例に該当すれば入居は可能ですが、原則は65歳以上で要介護3以上の高齢者であることが入居の条件になります。

ケアマネージャーさんに窺ったところ、現状は要介護3でも入居は難しく、実態は要介護4以上でなければなかなか入居できないそうです。

特例である40歳~64歳での特定疾病や要介護1~2の方の入居条件については、ここでは割愛します。

 

特別養護老人ホームのメリット

費用が安い

公的な施設ということもあり、入居一時金は不要ですし、月額料金の相場も6~15万円とリーズナブルです。

所得に応じた費用の減免制度があります。

看取りの対応が可能で終の棲家となりうる

看取りとは近い将来、死が避けられないと判断されている人に対して、身体的及び精神的苦痛を緩和し軽減するとともに、人生の最期まで尊厳のある生活を支援する事です。

病人の傍で生活上の世話をする、最期まで見守る、看病をするという患者を介護する行為そのものを表す言葉として使われています。

つまり、人生の最後をその施設で迎えることができるということです。

24時間介護が受けられる

特別養護老人ホームには看護師の24時間配置は義務づけられていませんが、介護スタッフは24時間常駐していますので、必要な時に適切な介護を受けることができます。

 

特別養護老人ホームのデメリット

原則要介護3以上でなければ入居できない

65歳未満の方や、要介護1~2の方も特例に該当すれば入居は可能ですが、原則は65歳以上で要介護3以上の高齢者であることが入居の条件になります。

ケアマネージャーさんに窺ったところ、現状は要介護3でも入居は難しく、実態は要介護4以上でなければなかなか入居できないそうです。

入居できるまでの待ち期間が長い

老人ホームの中では比較的安価ということもあり、申し込んでから入居までの待機期間がとても長いんです。

地域によっても差はあると思いますが、私の住んでいる地域(政令指定都市)では1~2年待ちといった話も聞きます。

地域によってはそれほど待たずに入居できるところもあるようですが、他の老人ホームに比べて待機期間が長いことは間違いないでしょう。

医療依存度の高い方の受け入れができない

特別養護老人ホームには介護スタッフは24時間常駐していますが、看護師の24時間配置は義務づけられていません。

ですから、看護師氏できない、たんの吸引など、医療依存度の高い方の受け入れができないことがあります。

 

特別養護老人ホームの費用・料金

入居一時金

有料老人ホームのような入居一時金は不要です。

月々の費用

「施設サービス費」、「介護サービス加算」、「居住費」、「食費」、「日常生活費」といったものがかかります。

それぞれについて説明します。

施設介護サービス費

介護を受けるための費用で、費用は要介護度などによって異なり、要介護度が高くなるほど、高額になります。

また、居室のタイプによっても異なります。

介護度ごとの施設介護サービス費は以下の通りです。

居室タイプ 多床室
従来型個室
ユニット型個室
ユニット型準個室
要介護3 20,910円 23,340円
要介護4 22,950円 25,380円
要介護5 24,960円 27,390円

居室タイプは後ほど詳しく説明しますが、ここでは簡単に説明します。

多床室は、複数人で1室を利用するタイプです。

従来型個室は、1室を1名で利用するタイプです。

ユニット型個室は、1名1室のうえ、ユニット(10名前後)単位で共同スペースが設置されているタイプです。

ユニット型準個室は、ユニット型個室で個室同士が仕切りで分かれており壁になっていないタイプです。

また、特別養護老人ホームは特例で要介護1、2の方もの入居が認められていますが、ここでは割愛します。

介護度が低い分、費用はこれより安くなります。

介護サービス加算

施設の設備、職員の体制、対応する処置やサービスなどに応じて基本料に加算される施設介護サービス費です。

施設によって内容は異なりますが、加算が多いほど手厚い人員配置やサービスを行っているといえます。

介護サービス加算項目は複数ありますが、内容については割愛します。

居住費

いわゆる「家賃」です。

こちらは、入居者の所得や資産等によって変わります。

所得や資産等が一定以下の方に対しては、その方の負担限度額を超えた分の居住費と食費の負担額が介護保険から支給される「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」という制度があるからです。

この特定入所者介護サービス費の利用には、事前に市町村に負担限度額認定を受ける必要があります。

利用者は、収入や年金に応じて「利用者負担段階」が定められ、この段階別に特別養護老人ホームの負担限度額が決定されます。

「利用者負担段階」は次の4段階です。

第1段階・・・生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で本人及び世帯全体が市民税非課税

第2段階・・・本人及び世帯全体が市民税非課税で合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方

第3段階・・・本人及び世帯全体が市民税非課税で第2段階に該当しない方、市民税課税層における特例減額措置の       適用を受けた方

第4段階・・・住民税課税世帯の方

以上を踏まえた居住費(30日分)は以下の通りです。

居室タイプ/利用者負担段階 第1段階 第2段階 第3段階 第4段階
多床室 0円 11,100円 11,100円 25,650円
従来型個室 9,600円 12,600円 24,600円 35,130円
ユニット型準個室 14,700円 14,700円 39,300円 50,040円
ユニット型個室 24,600円 24,600円 39,300円 60,180円

このように、本人や世帯の所得が低ければ、家賃である居住費は低く抑えられる仕組みとなっています。

食費

こちらも居住費同様、食費の負担額が介護保険から支給される「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」という制度があります。

食費の負担限度額は以下の通りです。

利用者負担段階 第1段階 第2段階 第3段階 第4段階
食費の負担限度額 9,000円 11,700円 19,500円 41,760円

このように、本人や世帯の所得が低ければ、居住費同様、食費も低く抑えられる仕組みとなっています。

日常生活費

病院代や薬代といった医療費、散髪などの理美容費、被服費、嗜好品、その他生活雑貨などは自己負担になります。

但し、クリーニングを必要としない私物の洗濯(施設内での洗濯)や、おむつ代(尿取りパッドなども含む)は施設の負担になります。

以上の「施設サービス費」、「介護サービス加算」、「居住費」、「食費」、「日常生活費」といったものの合計が月々の費用となります。

特別養護老人ホームは公的な老人ホームになりますので、所得の低い方はかなり少ない負担で入居することが可能となっています。

 

特別養護老人ホームで受けられるサービス

食事

1日3回、決まった時間に提供されます。

入浴

入浴回数は大体週2回のところが多いようです。

発熱で入浴できなかったり、そもそも入浴が困難な入居者については、体を拭くなどのサービスが受けられます。

排せつ

トイレまで移動できる方はできる限りトイレで排せつできるよう、トイレまで連れていってくれます。

寝たきりの方はベッド上で排せつ介助を行います。

リハビリ

入居者一人ひとりの状況に応じて、食事や排せつといった日常生活を送るために必要な機能の維持・改善またはその減退を防止するための訓練が行われます。

健康管理

施設医または訪問診療を行う医師や看護職員が健康管理を行います。

緊急対応

特別養護老人ホームには介護スタッフは24時間常駐していますが、看護師の24時間配置は義務づけられていません。

ですから、緊急時や夜間に看護師がいない場合は、すぐに連絡が取れるような体制が敷かれています。

掃除・洗濯

清掃は、施設職員もしくは委託業者などが定期的に行います。

洗濯は外部にクリーニングに出す場合は実費になりますが、施設内での洗濯は無料です。

レクリエーション

様々な日々のレクリエーションに加え、お祭り、クリスマスといった年中行事や月ごとの誕生会など、イベント的なレクリエーションもあります。

 

特別養護老人ホームの居室

上述の居住費のところでも少し触れましたが、居室タイプによって居住費は変わってきます。

ここでは、特別養護老人ホームの居室タイプについて説明します。

金額の安い順に言えば、「多床室」、「従来型個室」、「ユニット型準個室」、「ユニット型個室」となります。

特別養護老人ホームの居室は、「従来型」と「ユニット型」の2つのタイプがあり、古くからある従来型は4人部屋が多く施設全体で介護を行います。

ユニット型はすべて個室で10人程度を1つのユニットとして少人数の介護を行います。

多床室

定員2人以上の、個室ではない居室です。

実際は4人部屋といったイメージです。

ひとつの部屋に、複数人のベッドやクローゼットなどを配置した居室になります。

家具やカーテンなど、可動なもので仕切られているので、プライバシーが保たれにくいデメリットがある反面、その分居住費が安いというメリットもあります。

従来型個室

ユニットを構成しない個室です。

ユニットとは生活単位のことで、10人以下を1ユニットとして、台所・食堂・リビング等の共有スペースが設けられます。

ですから、従来型個室はユニットを構成しない個室になりますので、台所・食堂・リビング等の共有スペースが部屋の周りにない、単なる個室ということになります。

ユニット型準個室

ユニット型個室と同様、10人以下の生活単位(ユニット)で、台所・食堂・リビング等の共有スペースを囲むように個室が配置されています。

ただし、個室は天井との隙間がある可動しないパーテーションなどで仕切られ、完全な個室になっていないところがユニット型個室との違いになります。

ユニット型個室

ユニット型準個室10人以下の生活単位(ユニット)で、台所・食堂・リビング等の共有スペースを囲むように個室が配置されています。

こちらは完全に個室状態で、ユニット型準個室よりプライバシーに優れた居室となっています。

 

まとめ

これまで説明してきた通り、特別養護老人ホームは老人ホームの中で最も入居者が多く、公的老人ホームであるため費用負担も少なく設定されています。

但し、入居条件として原則要介護3以上でなければ入所できず、待機者が多く、待ち期間が長い事も特徴に上げられます。

実際、要介護3以上の状態と言えば、認知症が進んでいたり、身体的にも寝たきりだったりと、家庭でお世話することが難しい方が多いと思います。

要介護3以上の方を一般の家庭でお世話することは大変なことです。

知り合いのケアマネージャーさんがおっしゃっていましたが、このような専門的な施設に家族を預けることは、自分たちの負担も軽くなりますが、何より本人にとってもそっちの方がどれだけ幸せかと。

私も家内の父のために、家を新築する際バリアフリーにしたり、トイレや風呂に手すりを付けたりしましたが、やはり家庭のトイレや風呂では限界がありました。

やはり、専門の施設の方が本人も楽なんです。

特別養護老人ホームは老人ホームの中では介護度の高い方のための専門施設です。

ご家族、そしてご本人のためにも検討に値する老人ホームであると考えます。

次のページでは、介護老人保健施設(老健)について説明します。

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